フェルメールの音

音が止まる瞬間がある。
その時、音は落ちずに空中に貼りついていて、それを支えている空気や光のあやうい均衡が見渡せる。それは音楽が流れているさなかにも、時折、起き、音に照らされたいろいろな絵を、一瞬、見せてくれる。
(中略)
静けさのなかでしか音は聞こえない。光や空気や壁が調和して音は響き、机や椅子や人など、世界の全てのものは、共鳴する音を内在させている。それらの心理を、フェルメールは宙に浮かぶ音を描くことによって、静かに刻印している。